中学の時にちょっかいをかけてきた中のひとり。
毎日楽しそうに笑いながら殴ってきてたその子は
ある日突然自分を呼び止め
「オレ、もう殴るのやめるわ」と言ってきた。
あぁ、そう。
そんなこと言ってもどうせって思ってた。
でも結果は違った。
本当に言った通りにしていた。
同じグループの他の子がちょっかいを続けても
その子は二度と自分にちょっかいをかけることはなかった。
その子とは別々の高校に進学していてそれっきりだった。
ある日、地元の駅のホームで肩を強く叩かれた。
「おー!」
振り返るとあの日自分を殴ることをやめると言ったあの子だった。
偶然会えて嬉しいって表情をしていた。
ホームから改札を出るまでほとんど話してはない。
去り際に「じゃあね」と言っていただけだ。
自分からもほとんど言葉をかけなかった。
ここからは憶測でしかない。
殴るのやめるって言われた後に
あの子のお母さんの葬儀にクラスで参列したことを思い出した。
家族の死であの子の気持ちに変化がでたのかもしれない。
久しぶりにホームであった時に見せたあの表情は
自分が普通に生活していたことに安心したのかもしれない。